「貸す事など一切ありません」



弁護士もそう云う。
俺も、周りも同じ意見だった。

貸せば
どうせまた来るに決まってる。


家に専務と弁護士が来てた。

シアは那須からマグを渡され
一口だけ
口を着けて両手に持ったまま
不安気な顔で専務に訊ねてた。



「今まで・・お金を出して
貰っています、そのヘンは?」


「養育費を払うのは当たり前、
事実を知った上で、訴えも
起こさなかったんですから。」



子供の出生届を出すと、特別
な事情がない限り自動的に
戸籍上の夫との子にされる。

今では
落ちるトコまで落ちたが、
当時はエリートの経歴に傷が
付くとでも思ったんだろうか?


「・・イメージダウンになった
りしたらごめんなさい・・。」


シアの懸念通り、
宮田(シアの義父)に弁護士を
通して借金の申し出を断った
その翌日、
彼女の記事が
週刊誌に載ってしまったのだ。




『義父激白!Sia(CMタレント)
は恥かしい不良娘だった!』




へえ? どう恥かしいんだ?

アンタは・・・
恥かしくないってのか?

俺は次のスタジオへの
移動中の車の中で
そのつまらない
女性週刊誌を読んでいた。


会長が憤怒しなけりゃいいが?

事務所、
丸ごと衝動買いした件もある。

彼女のコトになると
ちょっとハメ外し過ぎるから。


俺には"なーんとなく"
この週刊誌の末路が見えていた。