___こんな事だろうと思った。


リビングの一角は、背が高めの
サークルに、籐のベッド。

炭のペットシーツが挟まった
チクワを半分に切った様な形の
飛び散り防止のトイレ。

・・どこかのペットショップ
みたいになっていた。

台所の食器棚を見てもやはり、
まだ何も入っていない。
せめてマグカップぐらい欲しい。

家から何を持って云った訳でも
なく、荷物も殆ど服だけだった。



「まだ自炊なんてやってないで
しょ? 新しいジャーが泣くね。」

「あ・・百均の食器って、案外
重くて買うの止めたんです。」


「まさか、わんちゃんグッズで
お給料使い果たしたって事は
・・ないだろうね。」


「えっ? 私が買ったのは、籐籠と、
ペットシーツとハンモック・・」


犬を入れるペット・ハンモックを
持って見せたまま、彼女の勢いが
止まるんだ。なぜか。

俺は思わず犬を指差した。



「お店の宣伝になるから、
ラフィを抱いたままオーナーと写真
を撮ってサインを書いてくれって。」

「で、この子は?」

「・・・頂きました。
他のグッズと一緒に。」

「そーなんだ、ふーん。」



血統書もグッズも着けて・・ね。

あのオヤジ、
今までずっとそんな事を?
タダにしたってのは初めて聞く。

ファンだったのか・・な??



「サークルは柘植くんから貰った
んです。もう要らないからって」

「ペットショップに・・
ここの住所は云ってない?」

「ええ、血統書は事務所に。」



用心深くしておかないと、
ペットショップの店員が情報を
漏らさないともかぎらない。

そのヘンは
ちゃんと解っているらしい。

業界の女の子でなくても
1人暮らしは怖いんだから。