______柘植くんは

ボストン・テリアを

飼っているそうだ。



"コイツの為に仕事、
頑張らな!って、活力貰うんよ"



モール街の美容室で
フワユル、ロングな
エクステを着けて貰い、
黒縁ダテ眼鏡に帽子を被る。



「あの・・、
お店にサイン頂けたら・・。」



知っていたのか、
美容室の人が色紙を出して、
こっそりレジでそう云った。



「え・・手形じゃダメですか?」


袖を捲くって手をパーにすると
店の人が凍りついている・・ミタイナ。

・・サインは書いた事がない。

喜んで貰えるならと、
初めてのサインを適当に書く羽目に。

でも嬉しい。
エクステがタダになった。

こうして、
変装もしたつもりで電車に乗り、
紹介されたペットショップへ。



「これも大きくなるんですか?」

「そりゃ、まあ・・。エエ。」



ジュードさんが言うには
あの犬そっくりで、
大きさは少し小さいらしい。

見た所フワ毛で確かに似てる。
コゲ茶の
ブチの目元がとても可愛い。



「ウチの子は皆、有名な犬舎の
ショータイプなんですよ。」



この足がそんなに長く育つなんて。

その、五匹いる中の一匹だけ
ショボくれている子が目に入った。

あの子だけ顔と尻尾付け根の
ブチ模様が黒い?

割と珍しい毛色なんだそう。
あの子だけ少し値段を高くしよう
と思ったが"元気がなさすぎる"。

元気が取り得の犬種なのに・・。
オーナーはボヤいている。


「あー、控えめって云うか、
何の異常もないのに
全然、吠えないんですよね・・。」



その言葉に聞き覚えがあった。


"異常はないんですが、
全然、話さなくなくなって・・"


他の子たちが柵の中でじゃれて
遊んでいるのに
ひとりだけ、"ふにっ"と座って。

ところがその子犬、
フイと目線を上げたのだ。

当然、私と目があって。




「あの子、
抱かせて貰えませんか・・?」