「・・・・。」


平日の昼過ぎ、独りの部屋って
こんなに静かなものなんだ。

パーカーを羽織って
ニットキャップもすっぽり、
ブーツを履いて部屋を出る。

ピッ、

鍵が掛かったか確認してから
10階からエレベーターで
下に降りシンプルでガランと
したエントランスを抜けた。

気分転換に新しい自分の街を
散策がてら見ておこうと思って。

道を歩いて行けば、ちらほらと
学生さんらしき、私と
年の変わらない人達とすれ違う。

聞いた話ではこの辺り、
大学が三つもあるもあるそうだ。

神社やお寺、池のある公園、
渋谷から電車で20分の所に
こんな所があったなんて。

車で迎えに来る専務には
かなり申し訳ない気分である。

静かな所なら
何処でも良かった。

最初、事務所が考えていた
候補に挙がった部屋は
全て23区内にあったのだ。

それらの物件は全てネット上で
見せて貰っただけだったが、

無駄に豪華なエントランス、
場所的に
窓も開けられないような環境。

どれも息が詰りそうだった。

エステや温泉、まして
コンシェルジュなど必要ない。

候補の中の、一番質素な所を
選んだ。それでも十分過ぎる。


そんな事を考えながら
てくてく、窓から見えていた
ショッピング・モールに着いた。

買い物するにもお金が少ない。
キャッシング・コーナーで
少しおろそうと思って。

百均もたくさん買えばバカに
ならないのだから。