あれだけ活発だった
シアの動きは
その日を境に止んでしまった。

かと言って、
何もしない訳ではない。

ただ、流されるまま・・
日々を
過ごしている様にも見えた。

仕事はちゃんと
こなしてるだけまだ
マシなんだろうとは思う。

彼女が明日から
動けなくなるんじゃないかと・・
周りも心配してたから。


暫く経ったある日の朝、
揃った3人で
朝食の最中の事である。


彼女が俺に"ウチを出たい"と
言い出したんだ。

那須はトーストに
齧りついたまま、
俺はミルク・ボトルを
持ったまま。

二人でピキーンと
凍り付いてしまってた。

とうとう、
その日が来たかと思った。

だけど今はまだ、
危うい気がして・・。



「此処に居たら・・私、
ずっと甘えてしまうでしょ?」



それが理由だった。

多分、それは表向き。

俺は・・いや、俺達は、
知らず知らずの間、
彼女を気に掛けすぎていた
のかもしれない。

那須もあの性格だ、
シアを何かして
笑わせようとバカやったり
するから。

家に帰ってまで
気を使いたくないって訳だ。



「俺は構わないけど、
専務はOKしないと思うな。」

「・・・。」



そう云われて彼女は
うわのそらで
アメリカンチェリーの
ジャムの蓋と
いつまでも戦ってる。


「俺が話ししようか?
ただし、条件付で。」


家を出て行くからって、
俺達が終るって
ことでもないんだし?

それにそれは前にも
云っていた事だ。
まず最初に俺に言えって。

シアの手の瓶を取り上げ、
ひと捻りで開けて渡すと
俺はニヤリと笑った。


「条件・・?」