「1人にして貰えませんか」

「ダメだ・・
また補導されちゃ困る・・」



震える、シアの涙声・・。

置いて行ける筈がない。

でもどうして、
この場所なんだろう?

彼女は最初、花束を持って
この通りの
この隙間をジッと眺めて
突っ立っていたんだ。

それがなぜか
座り込んじゃって
俺はどうしようもなく
此処に来た。

今、ギャラリーも増えてきて、
携帯やデジカメを
向けられ放題だ。

マズイ事態ではあるが、
彼女を此処から
無理やり引き剥がすのは
嫌だったんだ。



「・・酷いです、あんな嘘・・。」


「・・全て
シアの事を思えばこそ・・
付いた嘘だったんだと思うよ」


「・・・。」


「お前を心配して、わざわざ
嘘をつきに来るなんてさ、
あの人も奇特な・・いい男だったね。」



また・・泣き出したか体が揺れてる。

顔を上げさせたら
きっと酷い顔をしてるだろう。

俺はジャケットを
彼女の肩に着せて
そのまま立ち上がらせた。

野次馬も・・
なぜか静かでいてくれてる。



「その花・・此処に
持って来たんじゃないの?」



俯いたままのシアが頷いた。
少し屈んで
その場に花束を立て掛けてる。



「・・・さよならは?」



頼りなく首を振る。


顔を両手の平で覆い、
もうこの場所を見るのが
辛いみたいに・・



「・・行こう。皆、
心配して待ってる・・。」