シアは毎日、
自分なりに必死だった。


まるで彼の事を忘れ去りたい、
思い出さないでいようと
してるみたいに。

暇があれば
小学生の時に止めてしまった
バレエのレッスンを受けたり、

シーグラスが持っている
ジムへ泳ぎに行ったりと
体を動かす様にしている。


全てが、これからの自分に
プラスになる様に・・

これも専務の
セラピーのお陰である。

"自分が満たされないのに
人を満たしてあげる事なんか
できない"

恋愛も芸能生活も同じだ。

出来るだけそれに
近い状態へ・・と、
努力していた。

だからサクヤにも那須にも
シアの前では
坂巻孝介の名前を
使わないでおこうと
ちゃんと3人で取り決めている。

いつの間にか忘れてた・・
って云うのが
失恋の立ち直り方としては
理想ではないだろうか。

そう、いい方向に進んでいると
周りは胸を
撫で下ろしていたんだ・・。




「え____? 私?」


そんなある日、
柘植直樹側のスタッフから
バラエティの出演依頼が来た。

覚えているだろうか?
彼女が以前、局の喫茶室で
助けて貰った男である。

柘植自身の
単独バラエティでの
誕生日企画だそうだ。

スタッフが時前に取った
本人アンケートの項目の
ヒトツに

"一日彼女にするなら
誰がいい?"

そこに彼女の名前が
上がったそうだ。

本人はどの項目が
企画に使われるのか
全く知らされていない。

昼間の収録で事務所もOKを
出したようだ。

俺もその日、特別出演する。
彼女が俺の付き人だった
って事は世間でも知られている。

そこはセットではなく、
マンションの一室。

インターホンを押すのは
配達員に扮した俺。

出てきた柘植が
判らないハズはなく、
ひたすら指を指して
笑って聞きまくる。


「ジュードさんでしょ? 
ねえっ。」


俺は一切答えず
配達員にナリきり、
その部屋にデカイ段ボールを
押し込んでから
受け取りの判子を貰って
帰って行く。


"非常に壊れ易いので
優しく開けてね"


「まさか・・。」