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「・・見送って来た?」


帰りのタクシーの中、
シアの顔の泣いたアトは
すっかり消えていた。

睫の根っこが少しまだ
濡れている程度だ。

小さく頷くと俯いてしまった。
こんな時、
慰めようもないじゃない?

坂巻め、また泣ける様な
コトを云ったに違いない。

あのライターの顔黒女を
腹ませた?
まさか。それがそうまでして
彼女を突き離す理由・・?

本当の所は解らないままだ。

いや・・もっと前・・
最初から深入りさせる
心算じゃなかったんだ。


"そうするべきじゃなかった"


だからアンタは
シアをいつも1人で眠らせた。

後悔しているのに・・
彼女への気持ちは
どうしようもなかったんだ。

理由はどうあれ、
男っていつもどっか、
勝手だよな。

この子を見てみろよ。

兄に、父に、
そしてアンタにまで
置いていかれてさ。

健気に今も、
弱ってる涙腺と闘ってんだ。
眉間に少し、
似合わない凹凸まで作って?

口なんか富士山みたいに
噤んじゃって・・。

今・・俺にできる事は
小さな背中を摩ってやる事
ぐらいだろう。

それさえ優しさに感じて
泣いてしまっても
咎めたりしないよ?

寧ろ、
それを待ってるぐらいだ。
自分自身に
贖宥状が欲しいんだ。

ここぞとばかり、
慰めてあげるのに・・。

ただこうして邪まな想いを
秘めて見守ってるなんて、
俺は心底Sに違いない。



「あの人に
云いたい事があったんです」

「え・・?」

「食事、ちゃんと
取って下さいって・・。」

「・・・・・・うん。」



二人きりの後部シート、
俺は彼女の
肩ごとこちらに引き寄せてた。

出番は此処まで。

本当に・・
アンタには妬けちまう。