+ missing-link +

「ふ! また嘘だ。」

「責任取ンねえとな。」



目が笑ってる。

バレると解っていて
そんな嘘をつくんだ、この男。




「ひとつ云うなら・・
そうだな、サクヤじゃ
アイツを甘やかすだろ?
君みたいな以外と
苦労してる男がいい」


「何のこ・と・だ・か。」

「ふふ、それだよ、それ。」




俺達は初めて笑い合った、
トボケながら云った俺に
指までさして。

でも、俺は別に
苦労などしたつもりも
ないんだけど。


「アイツと結婚しろとは
云わないさ。ただ・・
助けてやっちゃくれないか。」

「あの時、実はアセった?」

「あァ、ちょっとだけね。」


参ったね・・。

この男となんでもっと
早く知り合わなかったんだろ。

俺は咄嗟に彼が出してきた
反対側の拳骨を
付き合わせてたんだ。



「ねえ、坂巻さん。
俺は長らく嫉妬なんて覚えた
事はなかったよ。貴方にその
感情を思い出させて貰った。」

「光栄だね・・。妙な事を
言う様だけど・・俺は最初、
彼女の傷に嫉妬したんだぜ?」



坂巻は指で、
自分の首を指して云う。
けして笑いなどしない、
真面目な顔で。

シアの心を捕らえて
放さない過去か。

たぶん、彼も
俺と同じだったんだ。

まさか疲れちゃったとか?



「失敗したよ・・、彼女を
抱くなんてさ。そうするべき
じゃなかった、うへっ・・」

「・・・?」



咽た煙草を慌てて消して
立ち上がった。
細い体を自ら摩ると
身震いして見せる。



「悪い、風邪ひいちまってな。
初日の雨、
裏にも相当入ってきてたんだ」

「ああ・・。」

「先に失礼していいか? 
俺、明日早いんだ。」



煙が変な所に入ったのか、
やたら咳きこみ始めた。

そう云えば他にも
風邪をひいた者がいる。

まだ飲み足りないけど、
早く帰した方がいい。


「お大事に。
また演りましょうよ。」

「勿論。いい仕事だった。」


彼は止まらない咳きに
手を当てながら
軽く手を上げ、
エレベーターに乗込んでいく。