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「ねえ、
まだ帰るの惜しくない?」

「・・タフですね」

「二度寝してもうサイコーに
スッキリしてるからね。」


料理屋を出た俺達は預けた
車に乗り込む。
そして、
返事も聞かないまま、
車は都会を離れてった。

そう云えば
彼女とは二度目の夜の
ドライブなのに
どんな曲が好きだとか、
全く知らない。
FMを着けて聞き流していた。


「・・この曲」

「・・ああ。」


元はプリンスの曲が
ラジオから流れてくる。

切な過ぎる、女の歌声。
もろ、失恋の歌。

実は俺も好きな曲だったりして。

失恋で泣ける曲、
ナンバーワンと云っていい。
やっぱ、
この歌は彼女の声でなきゃ。




「訳は解る?」

「ええ」

「フラれてから"13日と7時間経った”所じゃないじゃん。夜行性になった訳でもない。」

「ふふ、ええ。」

「だいたいこの歌詞
失礼だよ? 俺と一緒に食事を
しても何をしても悲しみを
拭い去れないっての?」




曲が流れてる間、勝手に
彼女の"今"に当てはめる。

外人の様に片手の平を天に
向け、ムキになったフリで
力説してみせた。
そんな俺を少し優しい目で
見てる。

俺は勿論、
彼女だって解ってるんだよな。

本気だった分だけ、
忘れるのにも
時間が掛かるって事をさ。



「・・そんな訳ないです。」

「ふふ。そうだって云うなら
ココで降ろす所だった。」

「エ。」



この歌詞の中で医者が
云っている言葉しか
俺は信用しないね。

彼は愚かでも何でもない。



「ねえ?」

「・・はい?」

「今直ぐ、ウチに帰りたい。」



手をクシャっと
口元にやったまま
彼女が止まる。

俺は運転しながら隣を見遣り
次の出口で降りた。



「Try to have fun
no matter what u do~♪」

なんて、ドクターの台詞で
揶揄って笑う。



「大丈夫、真面目にスルから。」



帰宅しよう。
フリーズした彼女を連れて。

だって今夜、
邪魔者は居ないから。