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「何だか、一杯お金を
使わせてしまって・・。」



陽も暮れ、
魚の美味い店に彼女の大好きなエビを目当てに来てた。

個室でボタンエビのお寿司を目の前に
彼女が箸を止めて食べるのを躊躇してる。



「十分、ウマイ思いも
させて貰ってる。
服も売れ続けてるし。
気にするなら出世払いでもいいよ?」

「・・尼さんに??」

「・・それ、
早く食べちゃいなさい。」



付き人だと云う
意識しかないから困る。

シアの辞書に"出家"という
文字はあっても
"出世"と云う文字は
ないらしい。

誰がお前にツルツル頭を
みかんの皮で
お手入れしてろと云った。

そうして欲しいのは
顔と髪とボディだ。
自分の事を全然ッ、
解っていない。

モデルやグラビア出の中堅
女優が聞いたら
"人生が嫌になる話"をしよう。

実はこんな彼女に
シーグラスが最初、
シアの契約金として新人?には
破格の"5"を申し出ていたと
云えばひっくり返るだうか。

知名度もない、
素人同然のこのコに。

勿論、あれだけの大企業。
相場を知らない訳じゃない。

国民的なアニメキャラは
"1億"だと聞く。
日本人メジャーリーガーの
相場もそう。ちなみに俺は
"8"だ。

タレントには
この契約金以外に
「出演料」が発生する。

相場ではCMの場合
1回の撮影につき契約金の
10%、
ポスター、スチールは
5%だったか?

だから前の経営陣も惜しむ。
他社の仕事を受ければ
金になる。CMは事務所に
とってもオイシイ仕事なのだ。

そして今回のプロデュースで
俺にもその他諸々のお金が
転がってきた。


「俺もね、レギュラーが増え
たりして忙しかったじゃない。
反省すべき所だよ。
シアだけでも休みを
取らせたら良かったんだ。」

「そんな事・・。」


でも1人にすると、
今度は心配しちゃうんだろう。
さすがにその本音は
言えなかったんだ。


「1人で休むなんて・・
私、心配で。」


「・・・。」



俺はテーブルの上に
頬杖着いたまま
固まってしまった。

それって、どう云う心配?