「別に?ただ、『みんなの屋上』の出入り口近くに、たまっている『人たち』がいて行きにくい、という相談があったから、現場検証に来ただけ。文句がおありで?」



つらつらとよく喋る女だ。


鞘は自分たちの空間を壊されるのが特に嫌いだから、あの、優しい笑みの下に、どす黒い気持ちを渦巻かせてるのが手に取るように分かった。


今日はトラブル続きで本当についてない。


なんと言っても、一番厄介な鞘が怒り始めたことが『ついてない』と思う何よりのきっかけだった。



「……あっそ。で?見つけられたわけ?」


「うん、あたしの目の前にいる。分かりやすく言ったつもりだったけど分からなかったかな?」



挑発的な態度をとる彼女は、いつか鞘の地雷を踏んでしまいそうで俺は、びくびくしていた。


けど、それがバレないように慎重に平静を装った。


彼女は、俺らを一人一人見渡してから、俺に目を向けた。