「ただいま……。」



家の中からは、全くと言っていいほど物音がしない。


千空と別れて、かったるい授業に出て、終わってすぐ、チャリを飛ばして帰ってきた。


ただいまの時刻、4時半過ぎ。


父さんは、おもてにある自営業のバイク屋、母さんは、スーパーでパート、弟は、今頃土手にいる。


だから、この時間帯は、俺くらいしか帰れない。


靴を脱いで、階段を上がって、目指すのは真っすぐ俺の部屋……ではなく、パソコンのある部屋。


なんか引っかかる、風間千空、というあいつの名前。


パソコンのある部屋の扉を開き、父さんが大切に並べている本棚のレースプログラムを手に取った。


一番新しいプログラムをめくる。