「お前。」



俺の目の前に立ちはだかったのは紛れもないカザマだった。


壁に寄りかかるようにして立っていた彼女は、人差し指を動かした。



「顔、貸せ。」



苦しそうに顔を歪め、肩で息をしながらそう言った。


俺は、呆気にとられて固まった。


カザマは、落ち着くようにため息を吐き出すと固まる俺の肩を突き飛ばすように押した。


その瞬間、廊下にチャイムが響いた。



「俺、掃除っ……」


「真面目気取りか?とにかく顔を貸せ、っつってんの。ついてこい。」