‥幾度それを繰り返した頃だろうか。ふと、彼女の瞳が一点に集中した。 そこには街頭に結ばれた、古くなって切れてしまいそうな黒みがかった紅いリボン。 春の花の甘い香り。 温かい日和の中、淋しそうに揺れている。 彼女は何も言わず、それを見つめて、目尻に涙を溜めている。思い通りにならないモノが流れ、溢れ、彼女の頬を伝う。 「お嬢さん」 予期せぬ穏やかな声が、彼女の背中に触れた。