「女王様、私が口を挟むこと、どうぞお許し下さい。」


唐突にチェシャが提案した。


「女王様、かの者に猶予をお与え下さい。2日間考えれば決心出来ましょう。」


「猶予じゃと…?」


「はい。かの者は先程来たばかりで、少々頭が混乱しております。
それに、道が繋がる日に返事を聞いても、間に合います。
どうぞ、猶予をお与え下さい。」


そう言ってチェシャは頭を深々と下げた。



亜莉子は驚いてチェシャを見る。



庇ってくれた…?



「…チェシャ、そなたが言うならそうしよう。」

「ありがとうございます。」

「そのかわり、アリスの面倒はそなたが見よ。」

「はっ。」

チェシャはずっと頭を下げいた。
素っ気ない印象の彼からは想像もつかない。


「女王様、アリスを2日間城でメイドとして働かせましょう。」

次にハクトが提案する。


「そうじゃな。好きにするがよい。」

「お心使い感謝致します。」


「うむ。3人とも、もうよい。下がれ。」


女王がそういうと、先程入ってきた扉が開いた。


ハクトとチェシャが深く一礼し、扉の方へ向かう。

亜莉子も慌ててお辞儀をし、後を追った。



3人が部屋を出ると、すぐに扉が閉められた。


部屋には女王と執事がいるだけ。


「フッ…、チェシャが他人を庇うとは…。珍しいものよ。」


女王は立ち上がり奥の部屋へと続く扉に手をかけた。


「これは待ちに待っていた時がきたのかもしれぬな…。」


ギギ…と音を立てて扉が開く。


「そうだとしたらー…、逃しはせぬ。」


そう言って女王は扉の向こうへと消えた。