そんな亜莉子を見て、チェシャは軽く溜息をついた。
「わからないのか。」
「ーーっ!そんなこと言ったって、心当たり無いんだもんっ!!」
チェシャの言い方に少しムカっとして言い返した。
「本当にーー…?本当に心当たり、無いのか?」
そう繰り返して聞いてくるチェシャの目に、亜莉子は魅入ってしまった。
髪の色と同じ深い黒紫の瞳。
綺麗だけれど、どこか悲しさが潜んでいるような…。
「どうした?」
チェシャは、黙ってチェシャを見つめている亜莉子に不審そうな顔をする。
「えっと、んーと。」
亜莉子は慌てて目を反らし、何か言わなきゃと考える。
どうしてこの世界に堕ちてきたのか…。
堕ちてー…??
亜莉子は、はっとした。
一瞬、あの時の映像が頭を過ぎった。
私はー…。
「…ーっおい、どうした!?」
急に涙を流し始めた亜莉子に、チェシャは驚いた顔をした。
亜莉子はいつの間にか自分が泣いているのだということに気付き、急いで涙を拭く。
「…、何でもない。ごめんね、いきなり。」
そうやって泣きそうな目で無理矢理笑って、チェシャを見上げる。
