そしたら、誰かが“危ない”って叫ぶのが聞こえた。


それで振り返ってみたら、さっきの人が波に浚われていた。


いつも通りに、助けるけど、なかなかの目を覚まさない。


しかも、驚くことに、その人は、彼だった。


中学時代、倒れた私になんの見返りも求めずに助けてくれた、あの人だった。



だけど、私の正体を知られるわけにはいかなかった。


だって、私は人形姫だから。


そんなこと知られたら、普通には接してもらえない。


“ねぇ、貴方お名前は?”


だからあえて名前を聞いたの。


“長谷川直。貴女は?”


“貴方を救った人魚。もしくは、ただの女子高生”


“なんて呼べばいい?”