由貴は、練習の時から、手を抜かないから、桜女の陸上部員からも尊敬されている。おまけに、背も高いから、女子高の中では、‘王子’とか呼ばれてる。

“ただいま~。ちゃんと1番とってきたよ~”

“お疲れ~。由貴めっちゃかっこよかったぁ”

“ほんとに~?まっ、わかってるって。ほら、次長距離だから詩音行ってきな?桜女の天才ランナーでしょ?”

“ハイハイ、じゃっ、いってきぁます”

私は、競技場に向かう。
途中何人もの人に応援されながら。


だけど、その人たちの中に、私の両親はいない。もし、いたとしても、決して応援なんかしてくれないだろうから、いなくていいけどね?


“選手の皆さんは準備して下さい”
 
選手が位置につくと、スターターがかまえた。

“位置について、用意”  パーン!


スタートの合図のピストルの、乾いた音が、会場に響きわたる。