翌日から、詩音は少しずつ話すようになった。


“詩音、部活行くよ”


“待ってよ、由貴”


そう言いながら走ってくる。


周りは初めこそ驚いてたけど、今ではおなじみの光景。


“由貴、姫に優しくしないと嫌われちゃうよ(笑)”


なんて、ふざけてる。



そう、あれから1年たった今、詩音は誰とも話すようになった。


そして、陸上部では期待の新人ランナー。


本人は`遅い´とか言ってたけど、実際はけっこう速い。


しかも体力あるから、力のだしかたを変えれば、すぐに速くなると思う。


そう、まだ記録への挑戦は、始まったばかりだ―――。