人魚姫

優しく笑む准を見ていられなくって目を閉じると、ちょっと前のバスルームで見た光景が思い出された。
それを頭の中で少しばかり弄って、転移させる。

頭の中で、准は浴槽に浸った人魚に触れている。
始めは無反応だったものの、次第に人魚は目を細めるようになる。
冷たかった体が熱を持ち始める。
うん、とてもいい感じ。

人魚は、私。
私は水面に映る自分の首元に、赤い痕がつけられているのを見つける。

「ねぇ、准……」

目を開くとやっぱりそこには准がいた。
そして、目が合う。

「あの人魚のことも、抱いたんだね」

彼女の肌を包む長い髪の隙間に垣間見た、赤い内出血の痕を思い出して言う。

私は重い体を起こし、1階のバスルームに向かった。
体中がベトベトしていて、何だかいつもより気持ちが悪かった。