狼谷の のん

猪瀬の父には　もとより、狼谷を保存する気持ちなどない。
狼を排除することだけが　目的だった。
そのために　狼谷で　見つけた　少年を保護し　養子にした。
ただ、それだけだった。　狼に育てられた少年として、
世間の話題をさらった彼の存在を　最大限活用した。

水と緑の一大リゾート、、、うそっぱちだ。
ただただ、広大なフェアウェイを擁するゴルフ場開発、、、
森も、天然のＯＢゾーン、、
狼や、小動物など、自然破壊への懸念を訴える市民団体対策としても
少年の人気は　功を奏した。

芝生植栽の間だけ　大量農薬散布への　影響を懸念しての
　狼の一時捕獲が進められた。一時的に　豚舎を　利用しての
飼育を猪瀬はのんと約束して、　他の狼たちの協力を得ていた。

壮観である。一同に集められた狼は　その数　数百匹、、、、
吠えるものもなく、おとなしく豚舎へ向う狼の群れには
見る者誰もが、声をなくした。

豚舎での暮しは　快適だった。
餌は、たくさん用意されている。
牙を研ぐ　骨もふんだんに用意されている。
全て、猪瀬が　恩返ししてくれてのものである事は
のんにもわかり　うれしかった。

事件は起きた。
豚舎が燃えたのだ。
飼育係が不在の夜に。。。。