その人の瞳は、まっすぐにあたしを見つめていた。
しっかりとあたしの瞳を咎め、そのまま貫いてしまうかのような視線。
彼の瞳は漆黒で、奥深くに真面目そうな光がさしていた。

「・・・・・・-い、おーい」
遠くから声が聴こえる。・・・・ん?遠くから?遠くには誰もいない・・はず、なのに。
不意に前から両手首をつかまれた。
大きい手。そしてすごく温かい手のひら。相手の吐息が耳にあたり、鳥肌が立った。
「大丈夫、キミ?」
「あ、えと、あのっ・・・・・・」
「?」
突然彼に囁かれるように話され、ひどく動揺してしまった。
そのおかげで、あたしの頭の中は混乱し言葉がうまく出てこない。やばい。
急に羞恥が襲ってきた。
「顔、赤いよ?」
「は、ゃ、わぁっ・・・・・・・・!」
拘束された手首を無理に解き、逃げ出したくなった。
意味不明な言葉を並べながら、やはり熱く熱をもってしまった頬を両手で覆った。

心臓がバクバクして、破裂しそうになる。いっそ破裂してしまってもいい、と思う。

これが「恋」というものなの?
わからない。あたしには、この「恋」の展開はまったくわからない。
「わからない」からいいんだ――。どんな人も口をそろえて、そう言うけれど本当にそうなのかもしれない。