真面目なあたしは悪MANに恋をする

一緒に逃げようなんて言われてないし、ちらっと見ただけで、一人でさっさと逃げちゃったくせに…何言ってるのよ!

あの場に置き去りにしておいて、勝手に事実を曲げないでよ

逃げた己を嘘で正当化しないでよ

「何、それ…加藤さんに逃げようなんて言われてないけど。あの場に置いてったのは貴方達三人じゃない。自分たちだけが怖い思いをしたと思わないでよ」

「あっれぇ…もしかして、昨日の寺島君じゃなあい?」

暗闇に三つの光が、灯る

二輪に跨っている三人の男が、ひときわ明るい声をあげて話しかけてきた

聞き覚えのある声にあたしは視線を動かした

黒に赤いラインの入ったバイクに跨っている男はケンケンだった

後ろ二人は…見たことのない男の子たちだ

ヘルメットをハンドルに引っかけたケンケンは、前屈みになって、ハンドルに肘をついた

朝、見たケンケンとは全く別人のように、赤族のツナギを着て、不敵な笑みを浮かげてバイクに跨っている

背後からの声に寺島君の肩がびくっと震えるのがわかった

ぱっと勢いをつけて、振り返ると、背中を見せたままあたしの近くに寄ってきた

あたしを守ろうと、下がったのではなくて、恐怖で、ケンケンから距離を開けたい一心って感じだ

できるならあたしの後ろに隠れてしまいたいくらいな勢いで、下がってきた

ケンケンのバイクってすごいツヤがある

お金がなくて、ファミレスでカップラーメンを啜っている人のバイクとは思えないくらい高そうで重厚そうなバイクなんだけど?