真面目なあたしは悪MANに恋をする

夕方からバイトに行くと、すでに片岡君と寺島君がキッチンにいて仕事をしていた

寺島君は、見た目は全くいつもと変わらない

けど食器を洗う時に袖をまくると、痛々しい痣と傷が見えた

食器を片づけるときなど、痛みをこらえるように歯を食いしばっている姿があった

『今日は、動きが鈍いですね』なんて片岡君が白々しい質問をして、寺島君は『ちょっと筋肉痛で』と答えていた

昨日の出来事を、片岡君は知ってるのに…ちょっと意地悪だ

「鈴木さん、話があんだけど」

バイトが無事に終わって、帰ろうとすると寺島君に呼び止められた

え? 何?

あたしはホールのバイトの子と別れると、寺島君の前に立った

「な…何?」

何を言われるんだろう

「昨日…」

「うん」

あたしは寺島君の言葉にこくんと頷く

「大丈夫だったのかよ」

「え?」

「昨日…お前だけ、車に残っただろ」

寺島君が苛々しながら、あたしに言った

「あ…うん」

だって、赤族の長は片岡君だもん

なんて思いながら、寺島君から視線を逸らした