真面目なあたしは悪MANに恋をする

窓の外に三人が横一列になって並び、片岡君が出てくるのを待っている姿が見えた

さっきまでのまったりした空気は消え、背筋を伸ばしてぴりぴりしたオーラを放っているのがわかる

片岡君って怖いんだぁ

そんな風に見えないけど…それはきっとあたしがバイトのときの片岡君しか知らないからなんだろうなあ

片岡君が外に出てくるなり、三人の表情が引き締まる

今まで以上に、ぴんと背筋を伸ばして、手を太ももにぴたっとつけて立った

あんな風に起立する人、今は小学生でもいないんじゃない?

片岡君ってすごい人なんだねえ

優しくて、温和で…喧嘩や争いからは無縁な人に見えるのに、赤族の長なんだよね

いかにも悪そうで、喧嘩に強そうで、悪ぶってる寺島君は、本当は弱くて、逃げちゃうような男だった

人は見た目や態度で、すべてを理解することはできないんだね

あたしは三人に向かって、怒っている片岡君の姿をじっと眺めていた

ふと、片岡君と窓越しに視線が絡み合う

片岡君の口の動きが止まると、みるみる顔が真っ赤になるのがわかった

片岡君の首も耳も、真っ赤になってまるで茹でタコのようになる

あたしから視線をそらすと、三人に何かを告げていた

三人はぺこっと片岡君にお辞儀をすると、店に入らずに、駐輪場のほうに歩いて行ってしまった

え? なんで?