真面目なあたしは悪MANに恋をする

「だ、大丈夫ですか?」

「い…痛いっす」

鞄が当たった頬を擦りながら、ケンケンが涙目になる

片岡君の視線が、こっちに向くと長い足ですたすたと近づいてきた

目が怒ってる…気がする

なんかバイト中の片岡君とは別人みたい

「透理、ケン、マサ…面、貸せよ」

テーブルの前で足を止めた片岡君が低い声で言うと、頭をくいっと店のドアのほうに振った

「も…もちろんです」

ケンケンはすっと立ち上がると、片岡君の鞄を持ったまま、いそいそとファミレスの外に出て行った

透理さんとマサ君も『ごめんねえ』とあたしに言いながら、ゆっくりと店の外に向かった

え? これってあたしはどうすれば…?

「鈴木さん、少し待ってください。カルピスと紅茶とウーロン茶が飲み終わる前には戻りますから」

片岡君はぺこっと頭をさげると、あたしに背を向けて歩き始めた