真面目なあたしは悪MANに恋をする

「え? ええっ?」

あたしは片岡君から離れると、改めて彼の顔を見つめる

片岡君はあたしから視線をそらすと、ぷいっと横を向いてしまった

「あ…あぅ…えっと、ご、ごめん。服に涙と鼻水がついちゃった…たぶん、化粧もついちゃったと思う」

あたしの言葉に、片岡君は真っ赤なツナギに視線を落とした

「気にしないでいいから」

ぶっきらぼうに答えると、片岡君はまたそっぽを向いてしまう

片岡君の胸ポケットから、携帯の着信音が鳴りだした

片岡君が携帯を手に持つと、耳にあてる

「捕まえたか?」

『はい、三人とも。ばっちりです! そちらにお連れしたほうが?』

「いや、そっちで勝手に料理して構わねえよ。お前の判断で、好きなようにしろ」

片岡君らしからぬ口調で言うと、片岡君はぱたんと携帯を折りたたんだ

え? 勝手に料理って……

「あ、あの…」

あたしは片岡君の赤い袖を掴んだ