真面目なあたしは悪MANに恋をする

『……さん、…ですか?』

え? ナニ? 族長が丁寧語?

『鈴木さん、大丈夫ですか?』

スズキサン? ダイジョウブデスカ?

あたしはドアの向こうから聞こえてくる言葉を脳内で、リピートさせた

どこかで聞いたことがある声だ

さっきまで聞いてた

今日は一日中聞いていたような声…な気がするけど?

あたしはゆっくりと顔をあげると、ドアの向こうに立っている人を見つめた

黒の短髪に、すらりと伸びた手が、窓をコツコツと叩いている

細長い指に見覚えがある

真っ赤なツナギには見覚えはないけど…顔は知ってる

「片岡君っ!」

あたしは名前を呼ぶと、ドアを開けて、片岡君に飛びついた

「こ…こわ…こっ、怖かったよぉぉぉ」

大きな声で叫んだあたしは、片岡君に抱きつくと、声をあげて泣き始めた

片岡君の手が、あたしの背中を撫でてくれる

あたしは片岡君のツナギをぎゅっと掴むと、胸に顔を押しつけた