真面目なあたしは悪MANに恋をする

加藤さんの車の前でバイクを停めた族長は、ゆっくりと地面に足をつけると、駆け寄ってきた族の一人にバイクを手渡した

振り返ると、車のほうに近づいてくるのが、わかった

あたしは下を向いて、小さくなる

怖いよぉ…どうしたらいいの?

殺されるのかなあ?

あたし、別に…寺島君たちと親しいわけじゃないのに

好きだったけど…仲が良いってほど仲良くしてたわけじゃないよ

こんな怖い人たちに、寺島君たちが睨まれてるなんて知らなかったし…

助手席の窓がコンコンと叩かれた

あたしは怖くて、上を向けない

族長らしき人が、あたしに何か話しかけているのはわかるけど…バイクのエンジン音に掻き消されて、なんと言っているのか、わっぱりわからない

一度、族長らしき人がドアから離れる

すぐにバイクのエンジン音が消えて、一気に静まり返った

一台も音が聞こえず、かわりに自分の耳鳴りがうるさいくらいに聞こえてきた

またドアがコンコンと鳴ると、あたしの肩がびくっと跳ね上がった