真面目なあたしは悪MANに恋をする

あたしはただ呆然と、族長のバイクの後ろで揺らめいている赤い旗に目を奪われた

そりゃ…逃げられるものなら、逃げたいよ

でも助手席がわには二人乗りのバイクがぴったりとくっついてるし、ドアすら開ける余裕がないもん

運転席から逃げようと思ったって…サイドブレーキとかが邪魔をしてて…跨がないとだし

それってすごい時間のロスじゃない?

加藤さんはさっと走って逃げられるかもしれないけど…あたしは無理

跨いでる間に、ドアの前に族が立ちはだかるでしょ?

あたしには逃げ道がないよ

車はゆっくりと停車した

加藤さんがサイドブレーキをかけたのと同時に、寺島君と茉莉がドアを開けて、外に飛び出して行った

加藤さんは、ちらっとあたしの顔を見るものの、寺島君たちのあとを追いかけるように、ドアを開けたまま、勢いよく走りだした

三人の背中が、闇の中に消えていく

族の数人が、バイクを放り投げるように降りると、猛ダッシュしていくのが見えた

他の数十人はバイクのまま、逃げた三人を追いかけていく