真面目なあたしは悪MANに恋をする

「葉南、話がある」

ヨウコ先生が触れている腕とは反対の肘を掴んだ片岡君が、怖い顔をしたまま飲み屋の外にあたしを引っ張っていく

「すみません」

あたしはどんどんと離れていくヨウコ先生たちに、軽く頭を下げた

外に出て、店の脇に寄ると片岡君の腕が離れた

この目の細い感じ…きっと怒ってる

絶対怒ってるよ

「あ…えっと、ごめんなさい」

あたしは片岡君に頭をさげた

「何にたいして謝ってるの?」

片岡君の低い声が頭上から聞こえる

ひゃー、すごい怒ってるかも

「コンパだって知ってたのに、職場の飲み会って嘘をついたこと。言い訳に聞こえるけど、でも先輩からの誘いだったから断れなくて…」

「それで?」

「ごめんなさい」

「コンパだって知ってたのに、飲み会に参加したんだ」

「だから、先輩の頼みだったから」

「彼氏がいるって言ってないの?」

「あ…いや、その、いるとは思われてないみたいで」

「は?」

片岡君の声がさらに低くなった

こ、怖くて片岡君の顔が見られない

片岡君と喧嘩はしたことないけど…片岡君が怒ってるのは何回か見たことがある

「私ってあんま魅力がある女には思われてないようで…、彼氏がいる女の雰囲気が全くないのかな? 『彼氏、欲しいよねえ』って同意を求める意見をかけられても、『彼氏はいるの?』という質問は、就職してからまだ一度もなくて…」

片岡君に説明をしながら、自分がどんどんと惨めになっていく