ズボンに入っている携帯が震えた

太ももに振動を感じた俺は、携帯の液晶を確認した

「ごめん。ちょっと」

俺は立ち上がると、携帯の受話ボタンを押しながらカラオケの部屋を出た

廊下に出ると、涼しい風が通り過ぎていく

「鈴菜? ごめん。今日はすぐ帰るって言ってたのに」

携帯を耳にあてた俺は、開口一番に謝った

俺は腕時計で、時間を確認すると、すでに深夜0時を過ぎていた

もうこんなに時間が経っていたんだ

『ううん。なかなか帰ってこないから、ちょっと心配になっただけ』

「地元の友達に掴まっちゃって。今、カラオケにいるんだ。もうしばらくは帰れそうにない…かな」

ドアにある小さな窓から、ケンの歌っている姿を眺めた

『わかった。明日は、7時に起こせばいいの?』

「あ、明日は1限が休講になったから、9時に起きるよ」

『ん。わかった。じゃあ、先に寝てるね』

「ん、ごめんね」

俺は謝ってから、携帯を閉じた

すぅっと息を吐き出すと、部屋からチョーとハナちゃんが出てきた

「僕、葉南さんを送ってくるから」

「わかったよ。ケンは俺らで面倒を見るから、チョーも帰って身体を休ませなよ」

俺の言葉に、チョーが俺の肩に手を置いた

「お母さんから?」

「あ…ううん。違うよ。大丈夫だから」

俺は手を振ると、ハナちゃんに別れの挨拶をして部屋に戻った