「俺、帰る!」

マサが立ち上がると、ドンドンと足音を鳴らして玄関に向かった

「どうぞ」

私は見送りもせずに、マサに背を向けたまま、部屋着に着替え始めた

だって…付き合ってないなんて言うから

付き合ってないのに、なんで合コンで怒るのよ

マサがそれで怒るなら、私だって言いたいことがある

ショップのバイトのこと

マサは服とアクセサリーを売ってる

女性たちに人気で、マサ目当てで店に通ってる女が大勢いるって私は知ってるよ

マサはその子たちと、一緒に遊んでるのを私が知らないとでも思ってるの?

バイト先の塾で、マサを気に入って、店に通ってる女子生徒がいるんだから

教師の中でも、マサがバイトしている店を知っている人もいるんだから

その子たちから、話し聞いてるよ?

マサがどんな風に遊んでるかなんて…マサは私が知らないと思ってるから、合コンのことで怒れるのかもしれないけど

私は知ってる

「ねえ、ホントに帰るよ!」

玄関でまたマサが大きな声をあげた

「『どうぞ』って言ったでしょ」

「なんで?」

「そんなの聞かないでよ。帰るって言った人を、引きとめてどうするのよ」

私は、ラフな格好になるとマサに振り返った