真面目なあたしは悪MANに恋をする

「ありがと。お父さんから聞いてね…ああ、あたしは一人じゃないんだって思ったの。もっと頑張らなくちゃって。それまでは、片岡君から連絡が来ないんじゃないかって疑って、あたしの言葉を信じてくれないお母さんを怨んで…一人でイライラしてたんだ」

「うん。僕も不安だった。このまま、葉南さんのご両親に僕の気持ちを伝えられないまま、葉南さんとの関係が終わってしまったらどうしようって。結局、僕一人の力で解決できたわけじゃないんだ」

「え?」

片岡君の言葉に、あたしは首をかしげた

赤い顔のままの片岡君が、にこっとほほ笑むと道路に通じるほうの出入り口を指でさした

片岡君の指先を追って、あたしの視線は公園の出入り口に目が動いた

『やばっ!』
『ケン、隠れるの下手すぎなんだけどっ』

ケンケンがばっと木々の影に隠れるのが見え、マサ君の冷たい突っ込みが聞こえてくる

ええ?

覗いてたの?

「あいつらのおかげ。僕一人だったら、葉南さんのお母さんにはわかってもらえなかったよ」

片岡君の手が、あたしから離れた

「出て来いよ。隠れてても意味がないだろ。バレてんだから」

片岡君が、大きな声で隠れているケンケンとマサ君に声をかけた

ケンケンが『えへへ』とだらしない笑みで、木蔭から顔を出した

マサ君はむすっとした表情で、ケンケンの脇腹にひじ打ちをしてからあたしたちに近づいてきた

「今夜、透理はキャンセルだって」

マサ君が頭の後ろで手を組んで、片岡君に言ってくる

「チョーの恋愛より、女の胸がいいってさ。薄情なヤツっすよねえ」

ケンケンがへらへらと笑い声をあげた

「それが普通だよね。俺だって、透理と同じ気持ちなんだけど」

「茉莉は仕事中だろ?」

「うるさいよね」

マサ君が不機嫌な声をあげた