真面目なあたしは悪MANに恋をする

「落ち着いた?」

ベンチに置いてあったあたしの分のココアを、片岡君が差し出してくれる

あたしは、ココアを受け取ると、ゆっくりとベンチに腰をかける

隣には片岡君が座った

「ごめ…。泣くとは…思わなかったよ」

あたしは苦笑すると、垂れそうになった鼻水をずずっと吸いあげる

ああ…あたし、今、どんな顔をしてるんだろう

片岡君に久々に会えると思って、滅多にしない化粧をしてみた

こんなにおお泣きした後のあたしの顔が想像できない

化粧はきっと崩れてる

アイラインとかマスカラとか…どうなってるのだろう

顔中が真っ黒なのかな?

パンダみたいに目のまわりが黒くなっているのかな?

鏡で確認しないと、どんな顔なのかわからないよ

どれくらい泣き続けたのか…10分? 20分?

よくわからないけど、言葉よりも涙が次から次へと零れて止まらなかった

「ずっと葉南さんに会いたかったよ」

「うん。あたしも、片岡君に会いたかった」

隣に座っている片岡君が、あたしの手を握りしめてくれる

握り合っている手の甲に、片岡君がキスを落とす

「ごめんね。葉南さんの気持ちを試すようなことをして。僕にも時間が欲しかったんだ」

あたしは首を横に振る

言葉にして『ううん、平気』と言いたいのに、口を開こうとするだけで、涙が出そうになった