真面目なあたしは悪MANに恋をする

片岡君はいつも座っていたベンチに、座っていた

長い足を前に投げ出して、ホットココアの小さいペットボトルを一つ、手に持っている

もう一つのココアは……

あたしがいつも座っていた片岡君の左隣に置いてあった

着崩れた制服に身を包んでいる片岡君は、あたしが公園に入ったのに気がつくと、口を緩めて微笑みかけてくれた

少しだけ鼻に皺をよせて、片岡君の目が細く弓型になる

1か月ぶりに見る片岡君の笑顔に、あたしの心臓が一気に静かになった

さっきまでうるさくあたしの頭に響いていた音を気にするよりも、あたしは目に映る片岡君の笑顔に吸い込まれていた

何も考えられずに、足が勝手に走り出す

片岡君はココアを持ったまま、立ち上がると、両手を広げてあたしを受け止めてくれた

温かい片岡君の身体が…たくましい片岡君の腕が…男らしい片岡君の匂いが……あたしを包み込んでくれる

言葉を発する前に、片岡君の腕に抱かれる

片岡君の胸に顔を埋めると、大声で泣きだしてしまった

片岡君への熱い想いが、感情が…言葉にならずに涙になって溢れだした

声を出して泣くあたしは、ときどき嗚咽まで漏らしてしまう

そんなあたしの背中を、片岡君は優しくさすってくれた