真面目なあたしは悪MANに恋をする

「あー、どうしよう! もう少しで10時だよっ。緊張しちゃって…何も話せなくなるっ」

あたしは携帯を持って、部屋の中をうろちょろと忙しなく動き回っている

『そんだけ話してれば充分だよ。うるさいくらい』

携帯の中から、ナツの声が聞こえてくる

9時からずっとナツと電話をしている

緊張しちゃって、どうしていいかわからなくて…ナツと話しをしたら心が軽くなるかと思ったけど

緊張度は増すばかりで、電話している意味はあまりなさそう

それでも話していないと、心臓が口から出てきてしまいそうで怖い

『そろそろだよ。電話、切るよ?』

「えー、切っちゃうの?」

『話してても仕方ないでしょー。葉南は話をする相手は、私じゃなくて彼氏でしょ! きちんと話して、明日、ちゃんとうちらに報告してよぉ。じゃあね』

ナツは「ばいばーい」と明るい声で言うと、さっさと電話を切ってしまった

『切断中』の画面を呆然とあたしは眺めてから、長い息を吐き出した

携帯の時間表示が9時55分になったのを確認すると、携帯を閉じて鞄の中に突っ込んだ

「お母さん、行ってくるね」

部屋を出ると、大きな声で叫んだ

お母さんが居間から出てくると、玄関まで見送りに来てくれた

「片岡君によろしくね」

「う…うん」

あたしはこくんと頷くと、鞄をぎゅっと握りしめた

「ほら、あんたが緊張してどうするのよ。片岡君のほうが、緊張してるんだから」

「そうなんだけど…でも、やっぱ緊張するよ」

「片岡君は良い子よ。お母さんが間違ってたんだから。きちんと会って来なさい」

「ありがとう」

あたしはお母さんに笑顔を見せると、家を出発した