真面目なあたしは悪MANに恋をする

部屋のドアがノックされると、ゆっくりとお父さんが顔をのぞかせた

スーツ姿のお父さんは、優しく微笑むと「ちょっといい?」と部屋に入ってきた

「今日は早いね」

あたしは、窓を閉めるとお父さんの顔を見る

「うん、ちょっと葉南に話しておこうと思って。明日で1ヶ月なんでしょ?」

「え? あ、うん」

あたしはお父さんに頷いた

お父さんが、なんで知ってるのだろう?

あたし、お母さんと口論になったときに口走ったのだろうか?

何度か、片岡君のことを理解してもらおうとお母さんと大喧嘩をした

お父さんが家にいるときに、気にせずに喧嘩をした

そのときに、あたしが言ったのかもしれない

興奮してて、今では何をどう言ったのか…覚えてない

お父さんは、あたしの机にしまってある回転椅子に座ると、仕事用のカバンを床に置いた

帰ってくるなり、あたしの部屋に来てくれたのだろう

「葉南、お父さんは葉南がどんな答えを出しても、怒らないから」

「え?」

「片岡君って人と駆け落ちすることになっても、お父さんは葉南の想いを尊重する」

お父さん…あたしの気持ちを理解してくれてるの?

「できれば、お母さんを説得して欲しいよ。頑張っても努力しても、ダメなときってお父さんにはあると思うんだ。だから頑張ってみて、ダメだったら駆け落ちしても仕方ないって思う。だけど、努力する前に逃げて欲しくない」

「うん」

あたしはお父さんの言葉に頷いた

胸が熱くなる

あたしの気持ちを理解してくれたお父さんが、すごく大きく見える