「葉南、片岡君ともう会ってはダメよ。バイトも辞めなさい。お小遣いなら、またあげるから。あんな子と縁を切りなさい」

夕食のとき、お母さんが無表情で口を開いた

あたしはお腹が減ったのに、一気に食欲が失せた

まだ一口も食べてないのに、自分の箸をテーブルに叩きつけると、席を立った

「バイトは辞めない。片岡君とも別れない」

「葉南っ! 貴方は何もわかってない」

「お母さんだって、今の片岡君を理解しようとしてないじゃない」

感情が高ぶり、あたしは大きな声を出してしまう

「私は多くの子供を見てきてるのよ」

「多くの子どもを見ているかもしれないけど、一人ひとりの心まで理解してないでしょ」

「葉南っ」

あたしは耳をふさいで、お母さんの声を遮った

「嫌だ! 聞きたくない。片岡君を理解しようとしてくれないお母さんの話なんて聞きたくない」

あたしは頭を振ると、自分の部屋に飛び込んでドアを閉めた

真っ暗な部屋で、携帯を手に取ると、片岡君に電話した

バイト中なのはわかってるけど…どうしても電話したかった

思った通り、片岡君は電話に出なかった

けど…数分後

片岡君から折り返しの電話があった

『葉南さん?』

「どうしてわかってくれないの? お母さんなんて、大嫌い」

大声で泣きながら、そう電話に向って叫んだ