真面目なあたしは悪MANに恋をする

その場にあたしは座り込むと、わかってもらえない悲しさよりも苛立ちが支配した

「お母さんもお父さんも、いつも仕事を優先するじゃない。階段から落とされたときも、熱が出て学校から迎えの電話があったって…仕事があるから一人で帰れるようなら…て言ってた。けど片岡君は違った。学校があるのに、病院に駆け付けてくれて。真冬の寒い時期だったのに、大粒の汗を流して病室に駆け込んできてくれて。すごく嬉しかった。ヒールが折れて、裸足で歩道を歩いてた時も、バイクでわざわざ引き返してくれて、靴を貸してくれた。しかも折れた靴を翌日には直して持ってきてくれて。優しかった。片岡君は悪い人じゃない」

「まわりが見えてないからそう思うだけよ」

「まわりなんて、どうでもいい。大切なのは片岡君の心でしょ?」

「違うわ。まわりが見えてないから、片岡君がどういう若者か、あんたはわからないのよ。夜中にバイクを乗り回してるような集団にいるような子よ? 虐めもして、屋上から友人を落とすような人間で、酒やたばこなんて気にせずにやれるような子たちと一緒に過ごしている子が、どうして悪い人ではないと言えるの?」

「それはお母さんが、一般的な目で片岡君を評価してるからだよ。片岡君個人を見てないから。片岡君は酒も煙草もやらない。確かにバイクを乗り回したりしてるけど、お母さんが知っているような暴走族は違うよ!」

お母さんはゆっくりと立ち上がると、首を大きく左右に振った

「葉南が暴走族の男と付き合うなんて…どこで育て方を間違ったのかしら」

今にも泣きそうな声でお母さんが呟くと、よろよろと親の寝室に入っていった

「ちょ…待って」

ばたんと部屋のドアが閉まってしまう

もうあたしと話す気はないってこと?

『どこで育て方を間違ったのかしら』…そんなふうに言わないでよ

あたし、間違ってなんてない!

片岡君は、違う

お母さんが考えている暴走族の集団と、片岡君が率いる赤族は違う

全然、違うよ!