真面目なあたしは悪MANに恋をする

居間に行くと、お母さんが革製のソファにお尻を落としているところだった

「葉南、あの子がどういう子が知ってて付き合ってるの?」

「うん。片岡君から聞いてるよ」

「お母さん、あの子が中学2年のとき、隣のクラスの担任だったの。亡くなった翔君の担任だった。だから詳しく知ってるわ。あの子がどういう子か…。あんなの子と付き合うなんて…」

「違う。片岡君は『あんな子』って言われるような人じゃない」

あたしは鞄を床に落とすと、立ったままお母さんに口を開く

どう言えば、いいのかわからないけど…片岡君は悪い人じゃない

ずっと亡くした友人のことを気にして、生きている

「学校でどういう話になって、どういう処理になったか…知らないけど。片岡君は違う。ただ自分を責めて、事実を言わなかっただけ。片岡君は悪くない」

「良いように、事実を曲げて貴方に伝えただけよ」

「違う。片岡君は、嘘をつけるような人じゃないもの。今も苦しんでる」

「苦しいのはあの子一人じゃないでしょ」

「そうだけど…」

お母さんが、深いため息をつくと頭を抱えた

「どうして…あんたが片岡君なんかと付き合ってるのよ」

「『片岡君なんか』…ってどういうことよ! 仮にも教師であるお母さんが、そんなふうに言わないでよ。事実を知らないくせに…苦しんで生きてきた生徒を見て来たわけじゃないのに。片岡君の表面だけ見て、彼を悪者にしないでよ」

あたしは鞄を掴むと、自分の部屋に駆け込んだ

信じられない

お母さんの口から『片岡君なんか』って言うなんて