―マサside―


「家ってこの辺?」

チョーとケンがバイクで走り去ってから俺は千明って人に、声をかけた

「まあ…ね」

「ふうん。じゃ、家まで送るよ…てか、話しながら家方向に向かうから」

俺は「どっち?」と指をさす

千明は「左」とだけ言うと、ゆっくりと歩きだした

「ま…なんとなく、わかったでしょ? チョーだけが悪いってわけじゃないって」

「だからって許せない」

「そんなこと、わかってるよね。それともチョーが、泣いて許しを求めた?」

俺の質問に、千明が首を振った

「チョーはそういう人間じゃないから。きちんと罪の重さを感じてるし、謝って済む問題じゃないと理解してる。だから、必要以上に謝らない。でもきちんとやるべきことはしてるよ。月命日には、必ず墓に行くし、命日には貴女の家に謝りにいっていると思うけど」

「来てる」

「だよね。それがチョーなりの謝り方であり、責任の取り方でもある。チョーの行動を見て、許す・許さないは貴女たちの勝手だから。チョーは許しを求めない。それだけのことだよね」

俺は隣を歩く千明を覗き見た

困惑の色を隠せない

弟を殺した憎い男…のはずが、殺したわけじゃなかったと知った

しかも近くにいて現場を目撃していたヤツらが、引き金を引いた出来事だった…なんてわかったときは、ショックだっただろうね

信じていたヤツらが、本当は弟の死を招いていて…憎んでいたヤツが、弟を守ろうと必死になっていた

今まで真実だと思っていたことが、嘘の出来事であり…180度も見方が変わったんだから

この人の気持ちなんて、俺には理解できないよ