「ま、ここはマサに任せて、俺らは先に帰りましょう」

ケンが明るい声を出した

「でも…話すなら僕から…」

「ハナちゃん、透理と一緒に待ってるよ」

ケンが僕の耳元で、囁いた

葉南さんが?

僕はケンの顔を見ると、眉に力を入れた

「このことを教えてくれたんっすよね。一人で乗り込んで、自ら怪我しに行こうとしている人がいるってさ」

ケンがにっこりと笑うと、僕の肩を叩いた

葉南さんが…、このことを

確かに、無傷で帰れるとは思ってなかったな

千明の要望によっては、それなりの怪我をしてくると思ってたから

葉南さんには、わかってたんだね

「チョー、気にしないでよね。こういうの俺の担当でしょ?」

マサがにこっと笑う

「別に、この人を傷つけるつもりなんて俺にはないしね。傷つける理由もないし。ああ、それと俺のバイク、回収して事務所に置いておくように、誰かに言っておいて。俺、この腕で運転できないから」

「りょーかい!」

マサのお願いに、ケンが腕をあげて了承した

「千明さん、本当に申し訳ありませんでした」

僕はもう一度、深々とお辞儀をすると原付に尻を落とした

「べ…別に」

千明がぼそっと呟いた言葉を聞いて、少しほっとした

許してもらったわけじゃない

でも、あの日の出来事の真実を知っている人が一人増えた…と思うと少し嬉しかった