「俺、このまま帰るっす。新しい愛車でも買いに行ってこようかな? マサにチョーと合流するように伝えておくっすね」

ケンが僕に笑みを見せた

「ああ。借金だけはするなよ」

「わかってるっすよ。茉莉ちゃんと一緒に暮らそうと思って、バイトの量を増やしたり、欲しいバイクを買わないで金、貯めてたんで」

ケンが立ち上がると、片手をあげて階段を下りて行った

もう…大丈夫だな

いつものあいつらしくなった

これからも一人でつらいだろうし、茉莉を見るたびに苦しくなるだろうけど

それはケンが一人で乗り越えるべき壁だ

茉莉を使って、見ないふりをしてもダメなんだ

茉莉の気持ちを考えず、身代りにしちゃいけないんだ

乗り越える苦しさは、僕らみんな知ってるから、ケンがつらいときは友人として支えてやる

透理もマサも

必ず助けるから、無理せずに乗り越えていけ

僕は見えなくなったケンの背中を思い出しながら、深く頷いた

『当初の約束通りに、2時間後、フードコートで会おう! ケンはもう落ち着いたから』

僕は葉南にメールをすると、階段を上った