「ちょっと来い」

片岡君がケンケンの腕を掴むと、引きずるようにその場から離れていく

「ケン、いい加減にしろよ」

離れていく片岡君の口から、そう言っているのが聞こえた

「…んだよっ。自分の女に声をかけて、何で俺が責められなくちゃいけねえんだっつうの」

寺島君がぼそっと言葉を吐き捨てた

茉莉が下を向くと、ぎゅっと拳を握った

「…ごめん」

茉莉がぼそっと謝った

「あ? んだよ」

寺島君が面倒くさそうに、聞き返してきた

こんな奴に謝る必要なんてないのに…茉莉、変わったね

「私、今、さっきの人と付き合ってるから」

「はあ? 何それ? 冗談のつもり? あいつが誰だかって俺、知ってるよ?」

「ん、私も知ってる。健太郎と付き合ってるから」

寺島君の眉間に皺が寄ると、舌うちをした

「マジかよ。意味わかんねえ…なんで、あいつと知り合ってんだよ」

「バイトの片岡君…今、一緒にいたでしょ。気付かなかった? 片岡君、ケンケンと友達なの。あたしが片岡君と付き合ってるから。茉莉はケンケンと知り合って、付き合い始めたの」

あたしの言葉に、寺島君がはっとした顔をした

「お前ら、最低だな」

「そう? 寺島君ほどじゃないと思うよ」

あたしはにこっと寺島君に微笑んだ