「あの…ねえ、手を離してくれない?」

「何で?」

ケンが首を傾げる

おかしいってば…私に聞き返してくるなんて…あり得ない

好きでもないくせに、昨日の責任を感じてる?

ううん、そういうのとは違う気がする

「あの…さ。昨日、バイクから落ちたのは自分のせいだし、ケンケンが気にすることじゃないから。だから責任とか感じないでよ。手…離して」

ケンの手がすっと離れると、私はほっと息をついた

腕の力を緩めたとき、目の前が真っ暗になった

ケンの胸が私の額にあたる

私はケンにぎゅうっと強く抱きしめられた

え? 何で?

意味がわかんないんだけど?

今まで、私の誘いを適当にあしらって手を繋ぐのすらも嫌そうにしてた人が…何してんの?

「『健太郎』だろ?」

「は?」

「俺の名前」

「知ってるけど…だから『ケンケン』じゃん」

「違う。『健太郎』って呼ぶんだよ」

え? 私は眉をひそめた

ナニが起きてるの?

なんで『健太郎』?

最初から、『ケンケン』って呼べって言ったのはそっちじゃん

何なのよ