「それと政巳を殴ったんだって? 背びれ尾びれがついて、母親に告げ口してたぞ」

「いつものことだよね」

「殴ったのは初めてだろ」

「まあ…そうだけど」

父から貰ったタオルを返すと、俺は鏡に移る自分を見ながら髪を整えた

「外国人っぽくするには、お前の顔は純日本人すぎるだろ? 髪を金髪にするより、伸ばして胸をつくったほうが似合うと思うが・・・」

「馬鹿じゃないの?」

俺は父に振り返る

父は「あはは」といたずらな笑みを浮かべて笑っていた

「戻るときは、ズボンのベルトは締めていけよ」

「はいはい」

「家を出て行ったときは、どうなるかと思ったが。案外、しっかりと生きてて安心したよ」

父が俺の肩にぽんと両手を置いて、満足そうにうなずいた

「しっかりと生きてないのは、政巳だろ」

「確かに…あの子も、金髪にして緑の目にした変わるかな?」

父が顎に手を置いて、首をかしげた

「やめてよ。せっかくあいつと変化をつけたのに、一緒にしないでくれる。それこそ、あいつを女にしたほうが似合うっつうの」

父は豪快に笑うと、何度も頷いた

「何かあったら、いつでも連絡していいんだからな」

「今度は政巳がいない時間にする」

父は俺の背中を優しく叩くと、男子トイレを出て行った

俺も、鏡に移った自分に自嘲の笑みを見せてから、ベルトを締めて廊下に出た