朝、俺は狭いベッドの中で目が覚めた

隣で、すやすやと気持ち良さそうに寝ている女がいる

誰かと一緒に寝るなんて、初めての経験だった

俺は、裸足のまま冷たい床に足をつけると、ジーパンに足を通して、靴を足先に引っ掛けた

ベルトも締めず、カチャカチャと腰骨のあたりでだらしなく垂れさがっているベルトを揺らしながら、長そでTシャツに袖を通しながら病室を出た

廊下は静かだった

シャツから顔を出し、ぼさぼさの髪をさらに掻きむしりながら、男子トイレに足を踏み入れた

寝起きの充血した目を、鏡で確認する

あー、コンタクトつけっぱで寝ちゃったよね

昨日は、カラコンをつけていたことすら忘れて寝たよね

手洗い場の蛇口をひねると、俺は冷たい水で顔を洗った

指先が痛いくらいに冷たい水は、俺の顔の皮膚を引き締めてくれる

ついでに寝ぐせだらけの髪にも、水を含ませた

「はい、どうぞ」

「どうも」

俺は目を閉じたまま、タオルを受け取ると、がばっと身体を起こした

誰?

俺の横にいたのは親父だった

手術着の上に白衣を着て、目の下にはクマだらけの父が俺の隣に立っていた

「ナニ?」

「あの子、目が覚めたら帰っても平気だよ。一応、傷口の消毒をしないとだから、通院にはなるけどね。都合の良い時間に、来ていいから」

父が俺の頭をポンポンと叩きながら、口を開いた

「あ、わかった」