「あの子、生きてるんすね?」

「ああ、生きてる」

「本当に良かったぁ」

ケンケンが茉莉のカバンをどんっと壊れたバイクの上に乗せた

「もしこれが運命の悪戯ってヤツなら、きっとケンに乗り越えてほしいっていう真里の想いだったんじゃないのか?」

「まいったな」

ケンケンが立ち上がると、首の後ろを掻いた

赤い目をして、あたしのほうに振り返ると苦笑した

「死んだ義妹に心配されるようじゃ…兄貴失格っすよね?」

ケンケンが肩をすくめた

え? ええ?

妹?

死んだ妹って言ったの?

恋人じゃないの?

「ハナちゃん、ごめんね。茉莉って子の携帯…壊れちゃってさ。アドレスがわからないんだ。だからあの子の家族に連絡できなくて…」

ケンケンが頭をさげた

「あ、いえ…あたしは平気です」

あたしは手を振って、笑顔を見せた

「ケンケンのほうこそ、怪我は大丈夫? 血が出てたんでしょ?」

「俺は平気っすよ。喧嘩で、血なんて流し慣れてるから」

あはは、とケンケンが渇いた笑いをたてた